無愛想な女
「無愛想といえば、さーさんじゃない」
いつかの大学時代のゼミの同窓会で、私が大好きな先生に言われた言葉です。
この記事で書いた先生。
まぁ確かに私はゼミでもほとんど発言しなかったし、飲みに行ってもそんなにニコニコしているわけでもない。
急激にテンションがあがることもないし、人に愛想を振りまいて好かれようと努力ができるタイプでもない。
先生の中では、私といえば無愛想、無愛想といえば私だったのだろう。
先生が50年以上生きてきて今までに出会った人の中でも、私は無愛想な人だったのだろうね。
でも私は、言われて嫌な気はしなかった。
もちろんそれは、私が自分大好きだからであるのだが、特にその中でもこの「無愛想」というのは私の性質の多くを占めているからだと思う。
先生は私のことを「無愛想」と言いつつ、今に至るまでお付き合いを続けてくれているのだ。
もちろん、単純にゼミの集まりに私が来ているってだけなんだけど、別に自分から話しかけないようにするとかいくらでもできるはずだ。
にも関わらず、私のことも気にかけてくれたり話しかけてくれるのだから、私のことを「こういう人間だ」と受け入れてくれているのだ。
私はそれがとても嬉しい。
子供の頃からわりと無愛想で、自分にも自覚があった。
でも別に感情がないわけではなく、むしろ私は感情的な人間である。
家では家族と喧嘩してブチギレたりは日常茶飯事で、家族と喧嘩したり男の子にいじめられたときはすぐに泣いていた。
喜怒哀楽の「喜」と「楽」もないわけではなく、テレビを観ているとき、とくにボギャブラ天国とめちゃイケを観ているときは笑顔になった。
だから、無感情な人間ではない。
みんな私のことを無愛想無愛想と言うのは、単純に自分の外の世界で楽しいとか嬉しいと思うことがないからだと思う。
全く無いということはないが、表に出すほどでもないのだろう。
あとは、「内弁慶」なのも大きい。
しかし大人になった私は、困ってごまかすときに笑みを多用するようになった。
「とりあえず笑っておけばごまかせる」と。
いうならば、笑っていない方が私にとっては自然で、笑っている方が不自然なのである。
それなのに、「笑顔がいい」とか「笑顔が見たい」とか、そんなことばかり言うのである。
特に男。
自分で言うのもなんだが、私は笑顔が可愛いらしい。
私自身は自分の笑った顔は昔から嫌いだ。
こればっかりは自分大好きな私でも受容れられない自分である。
多分外の世界で笑わないのも、決して意識しているわけではないが、この自分の笑顔が嫌いなのも大きいと思う。
しかし世の中生きていると、困ることやごまかす機会が多くなる。
そうなると「笑顔」も多くなる。
笑顔は私にとっては嘘だ。困っているときごまかしているときの象徴である。
特に、大学時代にガールズバーで働いていたとき。
元々男性は苦手だし、人と話すのもあんまり好きじゃない。
しかも、下品な話や、私に興味を持たれたくないのに根掘り葉掘り聞かれたりとか、言われて困るようなことを言われたりする。
しかし仕事なので無碍にできない。
なのでその度に、「笑顔」でごまかす。
そうすると、「笑顔が可愛い」とか言われてしまうのだ。
その度に、「へっ、クソがww」とか内心思ってたけどな。
性格悪いかな。
でも私にとっては、笑顔に言及されるのはすごく嫌なことなのだ。
笑うと気に入られてファンになられたりするし、それが私にとってはすごく苦痛だった。
私は人に好かれも嫌われもせずに、その辺にいる人のひとりでいたいのだから。
笑うと簡単に男に好かれてしまう。それが恐かった。
あと、成人になってたしなむようになったもの。
そう、「酒」である。
今はそこまででもないが、若い頃はもう大好きだった。
毎日飲んでたし、とにかく酒も好きだし、酔うのも好きだった。
しかし、酒を大量に飲んで酔ってしまうと・・・
気が緩んでしまうのだ。
そう、私は酔うと普段の鎧がとれてしまうだ。
気が緩んで、外の世界にいるのに、内の世界の自分に近くなってしまうのだ。
普段が無愛想なのもあって、酔うと「フワフワしてる」とか「目がトロンとする」とか「可愛くなる」らしいのだ。
そうは言われても、あんまり気にしてはいなかった。
しかし、勘違いする男が出てくるのだ。
こんなこと自分で言うのもなんだが、「笑うと(男が簡単に)落ちる」のだ。
いや、落ちるっていうか、「こいついけそう」って舐められるんだと思うけど。
「なんか恐いと思ってたけど、あれ、なんかもしかしてこいつちょろくねww」
みたいな。
私が笑うと、(主にモテない男に)そう思わせてしまうようなのだ。
あと、ここでよく話す、仕事の人間に一方的に好意を抱かれ2年間苦しめられた話。
これも元々は、1つめの嘘の笑顔と、2つめの酒で緩んだのが原因である。
だって仕事だったら、ある程度人に優しくするでしょ?
特に上の人に横柄にしたり冷たくしても自分の首を絞めるだけだってわかるし。
それやって許されるのは、ドクターXの主人公並に失敗しない人くらいでしょ。
私はそんな有能な人じゃないから、困ったときやごまかすときは笑っとくし、普段はある程度物腰柔らかくして優しい人を演じておく。
特に目上の人ならなおさらでしょ。
それをモテない男は勘違いする。
優しくしてくれた。笑ってくれたって。
ふだん人に疎まれてる人だとなおさら。
「とりあえず優しい人を演じとけばいい。とりあえず笑っておけばいい」。平和主義・事なかれ主義の私の性格が、あだになってしまった。
よく「女はイケメンとブサメンに対する態度があからさまに違う」とか言われるけど、それって防衛策でもあるんだなって、よく分かった。
モテない奴はちょっと優しくすると勘違いするからだ。
今までは、「そんなん切ればいいだけじゃん」と思ってたけど、モテない男の執着心はものすごいということがわかった。
簡単に切れない人間もいるのだと。
多分、人並みの恋愛をしている女の子たちは、そういうことをもっと早いときに経験したり、そういう経験をした人を身近に見たりしてきたのだろうね。
好かれて困るような相手には、少しくらい辛らつに対応するくらいがちょうどいいのだろうね。
モテない男にとっては、普通のほかの人への態度と同じ態度が「思わせぶり」になってしまうのだ。
私はもう、笑わないことに決めたよ。
私の笑顔は、私が大嫌いな私の笑顔は、人によっては「キラースマイル」らしいから。
もう面倒なのは嫌だ。別に人にも好かれたくないし。
というか、もう演じないことにした。
ごまかしの笑顔。優しくて柔和な人の演技。
それをもうしないことにした。
あまり笑わないのが本当の自分だから。
楽しいのに笑わないようにするのは辛いだろうけど、私にとっては笑う方がつらいことだからね。
だから、背伸びせず素の自分になるだけだ。
酒も昔よりは飲まなくなったしね。
そもそも、もう絶対友達や学生時代の知り合いとしか飲まない。
酒は私の「友達」でもあるが、自分自身をさらけ出してしまう「危険人物」でもあるのだ。
だから迂闊に他人の前に呼び寄せてはいけない。
タイマンか、親しい人たちといるときにしか呼び寄せてはいけないのだww
もう次どっかの会社に就職するとしたら、飲み会は行かないし、酒は飲めないことにするし、仮に行ってもお茶しか飲まない。
だからこれからは、これからも、私は無愛想な私でいくよ。
そんな自分が大好きだ。